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社会福祉法一部改定法案への反対声明を発表しました

  • 2015年6月24日
  • 声明・コメント

2015年6月24日

私たちは「社会福祉法一部改定法案」に反対します!
ー憲法と障害者権利条約にもとづいた権利としての社会福祉を守るためにー

社会福祉法人いずみ野福祉会 理事会


 与党は、本日(24日)の通常国会会期末を目前に控えた22日、集団的自衛権の行使を盛り込んだ憲法9条に違反する安全保障関連法案(戦争法案)成立のために国会会期延長を提案し、9月27日まで95日間延長することを衆議院本会議で与党等の賛成多数で採決しました。異例ともいえる大幅な会期延長により安全保障関連法案(戦争法案)を可決成立させるねらいです。一方、返す刀で「社会福祉法一部改定法案」(以下、「一部改定法案」)等についての採決を目論んでいます。私たちはこの間表明してきましたが、本法案のもつ本質が、憲法25条に明記された「国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を侵害し、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」義務の放棄であり、社会福祉を必要とする国民や私たち社会福祉事業に携わる者にとって重要な問題となることから、延長国会に入るにあたってあらためて本法案に強く反対する立場を表明します。

 例えば、子どもは貧しい家に生まれようが、富める家に生まれようが、大切に育てられなければなりません。歳をとるだけ余計に高齢者は大事にされなければなりません。安心して老後をすごせるのは当たり前のことです。また、障害があろうと市民としての尊厳を重んぜられ自由に暮らせる、障害者を家族にもつ人々が、そのため言葉に尽くせぬ様な苦労を抱えるのではなく、やはり同じ市民としての尊厳と自由が保障されるのは、至極当然のことではないでしょうか。こうした保障が進むことこそ民主国家を標榜し先進国と言われる我が国のあり方ではないでしょうか。日本国憲法下では、それを実現するのが国・地方自治体と共に社会福祉法人等、非営利の社会福祉事業体の役割です。

 現行の社会福祉法は、社会福祉基礎構造改革の具体化として2000年4月より施行されました。結果、先のような社会福祉法人の役割が曖昧にされ、社会福祉における公的責任の後退と市場化が進められました。
障害者福祉でいうならば、社会福祉事業が障害者の人生をトータルに支援する仕組みから、時間と区分認定で区切られた「福祉サービス」という商品として売買する仕組みへと変えられてしまいました。そのことによりサービス産業ともいうべき株式会社等営利を目的とする企業が参入しやすい環境が整備されてしまったのです。
そのため重度の障害児・者や経済的に困っている障害児・者が置き去りにされ、「手のかからない」障害児・者、または経済的に裕福な世帯を対象とした事業が進められてきているのが今日の実態です。私たちは、こうした社会福祉の公的責任から自己責任への転嫁に異議を唱えてきました。

 今回の「一部改定法案」は、こうした仕組みの見直しを図るものではなく、いわゆる成長戦略の一環(営利活動の拡大)として行なわれるものです。現政権は、「医療・介護」分野への市場参入を進めるための規制を緩和し、成長戦略の柱と位置付けました。昨年6月に閣議決定された「日本再興戦略」改訂2014や「規制改革実施計画」では、社会福祉法人を株式会社と同じ環境におくための「イコールフッティングの基盤の確立」をあらためて位置付けました。
 一部の社会福祉法人の不正や明確な定めのない、いわゆる「内部留保」をはじめとした社会福祉法人バッシングを背景に、既存の制度の対象とならない日常生活上・社会生活上も支援を必要とする者に対し、「無料または低額な料金で福祉サービスを積極的に提供」することを全ての社会福祉法人に義務付けることがうたわれています。これは、この間の公的福祉の縮小や後退、市場化において生じた様々な社会福祉の課題が数多く地域に潜在する中で、すべての社会福祉法人に社会福祉制度のセーフティーネットを担わせ、社会保障費の支出削減のために社会福祉法人の資金と人材を流用させる仕組みです。
 このことが強要されれば、本来業務以外に「地域貢献」が押し付けられ職員の負担が増加し、この間の報酬単価の引き下げとあわせて職員処遇の低下を招く事態となっていくことが容易に予想されます。そして本来社会福祉政策に必要なものは、国が予算措置を講じるべきところが、社会福祉法人のいわゆる「経営努力」によって「地域貢献」活動をするための資金や人材を生み出さなければならないこととなります。これが実行されると多くの社会福祉法人が解体の憂き目にあい、それを免れた社会福祉法人においても職員の労働条件や人件費を圧迫せざるを得なくなります。
また、本法案では福祉職員の退職共済に関する公的助成を廃止することも予定されています。本来社会福祉事業には、心温かく専門性のある優れた人材が必要です。現在、福祉職員の人材不足が社会問題化していますが、より一層深刻な問題となり、障害児・者の人権や豊かなくらしを守っていくことは到底できず、社会福祉事業が後退していくことは明らかです。

 私たちはこうした「一部改定法案」の動きを看過することはできません。加えていえば、このような動きは本来の日本の社会保障・社会福祉制度の根幹にかかわる問題であり、公的責任下における「現物給付の担い手」としての社会福祉法人の性格を変質させるものであるからです。戦後日本の社会保障・社会福祉は、先にふれた憲法25条に基づき福祉の三要件(「公的責任」「必要十分」「無差別平等」)や、公的責任の三要件(「設置責任」「運営責任」「財政責任」)に基づき施策化されてきましたが、そのことが全面的に否定され、社会福祉制度のありかたそのものが決定的に変質させられます。憲法25条の解釈改憲といわざるをえません。
さらに、この内容が、全国の社会福祉法人に丁寧に説明されることなく、拙速に改定が進められようとしていることも大きな問題です。

 私たちは、1977年に岸和田市において産声を上げて以来、「障害者も市民として自由に働き暮らせる街」をめざして、多くの市民のみなさんに支えられながら事業を進めてきました。それは「他の者との平等」をうたった「障害者権利条約」(2006年12月国連にて採択)と同じ立場です。 
制度が不十分で時々の行政が対応できなかった課題についても、民間社会福祉事業の創造性や先駆性を発揮しながら、職員の専門性と気概において問題の解決に取り組んできた歴史をもっています。現在では、大阪南部を対象にのべ約1000名を超える方々が利用する事業にまで至りました。このことは、地域における切実な要求を把握し、その問題解決に向けた取り組みを進め制度化を図り事業化してきた結果です。そして、公的責任を追求する民間社会福祉事業の役割を果たしてきたと自負するものです。

 私たちは、あらためて延長国会における「一部改定法案」の審議に際し、社会福祉事業を大きく変質させる本法案に反対し、社会福祉法そのものの根本的見直しを求めていきます。そして、国民が期待する権利としての社会福祉を守り発展させる立場で、憲法25条と「障害者権利条約」の批准国にふさわしい社会福祉施策が展開されることを国に求めます。そして国民に深い理解を呼びかけます。


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